FEATURE
デザイントライン VOL_09 石崎 孝多さん
アートとは、探検のようなもの。そう考えるだけで人生が面白くなる。
渋谷と原宿の間。明治通りから1本奥に入った先にキャットストリートと呼ばれる遊歩道があるファッションや雑貨屋などがひしめき合い、東京のカルチャーの一端を担っていると言っても過言ではない場所だ。そんなキャットストリートに一風変わったお店がある。ありとあらゆる雑誌が並べられた店内からは、一見オシャレな本屋なのかと思ってしまいがちだが、実は全く違う。そこはすべてフリーペーパーのみを扱ったお店なのだ。その「Only Free paper」と名付けられたお店ははたして一体何なのか? 今回はデザインとはちょっと違う、東京カルチャーについてのお話。

ー以前からキャットストリートを通るたびに、気にはなっていたんですが、「ONLY FREE PAPER」とはどんなお店なんですか?

石崎 考多(以下略I):

お店の名前の通りのフリーペーパーを専門に扱う本屋!? お店!? です。基本的に、僕の独断と偏見で選んだ、日本全国で発行されている様々なジャンルのフリーペーパーををお店に置かせてもらっているような感じです。

ーフリーペーパーのみ!? 僕はてっきり海外の雑誌やジンなどを中心に置いているお店かと思っていました。フリーペーパーだけを扱ったお店って、現状無いに等しいんじゃないですか? それこそ、カルチャー好きたちが待ち望んでいたお店だと思うんですが……。

I :

そうですね。昨年の12月にお店をオープンしてからは嬉しいことにお客さんはひっきりなしに訪れてくれていますね。キャットストリートっていう、人が多く訪れる場所柄もあるんでしょうが……。みなさんそれぞれが気になるものを手に取って、持って帰るのを見ているのは嬉しいものがありますね。ファッション、ストリートカルチャー、音楽、美容、地方の文化……と、ここには何でもありますからね。だから、ここに来ればお目当てのフリーペーパーが手に入るって思ってくれている人も多いんじゃないでしょうか。

ー確かに。ざっと店内を見させてもらいましたが、幅広いというか、ほぼ全てを網羅している感がありますね。普通のお店では見かけないものも数多くありますし、フリーペーパー好きにはたまらない空間ですね。でも、これだけのフリーペーパーはどういう基準で選んでいるんですか?

I :

すべて僕が実際に読んでみて、気に入ったものだけを置いています。ある程度、ビジュアルや内容などを確認して、素直に面白いなとか、格好良いなって思ったものばかりですね。すごくおこがましいですけど、自分の感覚のみでジャッジしていますね。というのも、僕は元々お店を始める前にフリーペーパーを個人的に収集していたんですね。趣味として。そこでありとあらゆるジャンルのものを片っ端から集めていく中で、数が膨大になってしまって……。そこで整理するようになっていったんですが、その中でそういった取捨選択の感覚が養われてい
ったのかなと、思います。このセレクトには自信を持っていますね。

ーそうなんですね。ということは、そのフリーペーパー好きが高じて、お店にしてしまったんですか?

I :

そうですね。でも、もう1つの理由があって、それはカルチャーの発信場所を自分自身で作りたかったということが大きいですね。

ーカルチャーの発信場所? それはどういうものなのですか?

I :

フリーペーパーももちろん好きなんですが、雑誌もすごく好きなんですよ。昔から。僕の地元は福島なんですけど、18歳で東京に出てくるまで、ありとあらゆる雑誌を読みあさっている雑誌少年だったんです(笑) そこに書いてある数少ない情報を元に、ファッション、音楽、映画、写真やアートなどありとあらゆるものに興味を持ちました。その中から1つの物事を知り、さらにそこから掘り下げてもっと深い物事を知っていく。その無限ループにハマってしまったんですね。東京に出てきてからも、スタイリストのアシスタントなどをやりながら、猛スピードで移り変わるカルチャーの変遷を追いかける日々で……。でも、ある時そういったカルチャーの発信場所がだんだんと少なくなっていくように感じたんです。洋服屋、レコード屋やクラブなども濃ゆい場所はだんだんと閉店したり、なくなってしまっていって、人が集う場所がなくなってきているなって。逆にインターネット上ではそういう場所は増えているんですが……。だったら、自分で作ってみようと思ったことが、すべての始まりでした。

ーその題材がフリーペーパーだったんですね。

I :

そうですね。自分自身に一番身近な存在だったし、やっぱり雑誌と違って、老若男女問わず、何かを発信したいと思っている人たちの表現の場所なんですよ、フリーペーパーは。そこで扱われている題材はどういうカタチであれ、街や村のローカルなコミュニティで実際に起こっていることなわけだし、それがもう1つのカルチャーなんだと思います。そんな小さいカルチャーの見本市とも言えるのが、「ONLY FREE PAPER」なんです。そのローカルかもしれないけど、魅力的な物事が、このお店を通して、知らなかった人に伝播していく。もしかしたら、そのカルチャーが大きな一大ムーブメントに成っていくかもしれない。そうなったら、凄く嬉しいし、考えるだけでワクワクしますね。そういった様々なジャンルのフリーペーパーが一堂に会すことで、1つの憩いの場の空間をデザインしているつもりです。

ー確かに。まさにカルチャーの見本市ですね。そんな石崎サンが今注目しているフリーペーパーはどんなものなんですか?

I :

「NEWTRAL」ですね。まだ二十歳あたりの若い世代の奴らが作っているものなんですけど、とにかく完成度が高い。ファッション、音楽、カルチャーが題材になっているんですが、現在雑誌で見られるようなものとはどこか一線を画しているような感じですね。しかもその目の付けどころだけではなくて、デザインや誌面のアートディレクションも素晴らしいんですね。ニュージェネレーションの勢いというものを感じさせてくれますね。

ー二十歳そこらで面白い情報をクオリティの高いパッケージに包んで、表現する。凄い時代になりましたね。正直驚きですね。しかし、こういう若い世代から刺激は常に受けているとは思うんですが、実際に自身でフリーペーパーを作らないんですか?

I :

もちろん、自分の中で画策しています。世の中をアっと言わせられるようなものを作るために。

ーそれは是非読んでみたいですね! フリーペーパー好きが手掛けるフリーペーパー。何か良いムーブメントを起こせそうじゃないですか。完成するのを楽しみにしています。

I :

今年の夏までには何とか第1弾を発行できるように頑張ります。
石崎 孝多(only free paper代表取締役)
様々なお店に置かれているフリーペーパーを、ジャンル問わず一挙に集め、
新たなカルチャーの発信源としてメディアを含めた世間一般から注目を集めるお店
「only free paper」の代表。
渡辺 潤
本誌のアートディレクションを担当。
異業種のクリエイターが所属するkaleidosxope Inc.の代表。
ジャンル、業種を越えたクリエイションの実現を目指し、活動を展開。
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